色 谷 収まり

民家暮らしの住民にしてみれば、波板トタンの仕様は、以前も話した通り、ルネサンスに近いものがあった。
何しろ施工面積の大きさに対しての重量、コストがライトで、且つ頑丈で長持ち。しかし音や室温の穏やかなる遮断といった事になると土と瓦で施工したものには叶わない。
素屋根における雨音や室温変化は、以前の暮らしに変化を与える事なく、瓦葺替え前に講じるひとつの選択肢だと考える。

茶色九尺をめいっぱい使う仕様である。サイズの和様化は定まったものの、色の選択肢にまだ伸び代がある。日本における波板トタンは、国産化して既に1世紀近く経過し、マテリアルとして民家に馴染んで然るべきフェーズに入っているが、どうだろう。メーカー出荷の段階から、墨マットに燻し銀を所望したいものだ。

さてトタン貼りが終わると細部が気になり出すであろう。樋の据え付けがまだ終わっていないが、谷も上手に収まったようである。なかなか作り手がない網代は、別所で保存するかどうか、安全性から撤去するものとを精査しながら作業を進めたい。また、ブルーシートとの境界も無難に収める事ができた。それぞれの耐久年数を考えれば、ここでブルーシートはいかがなものと思うかもしれないが、同じ高さの軒が、距離にして3倍ほど続いている。施工の区切りとなる凸部分のみブルーシートで軒を守る収まりとしたい。

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